のびのび歌う会
歌と認知症予防

『人生100年時代』と言われ、少子高齢化が進む社会をどのようにして成立させるのか、それはとても難しい問題ですね。
この問題に決定的な解決法などないのかもしれませんが、高齢者に元気に生き生きとすごしていただく事を考えると、認知症の予防はとても大切なキーワードになります。

歌うことや音楽を聴くことが認知症予防になるのか、この課題に対してすでに多くの取り組みが行われて論文などで報告がされていますが、管理人が読ませていただいた論文の多くが、明確な原理と成果を示すには至っていないように感じます。
ここでは管理人が調べた認知症に関する情報を整理して、予防の取り組みにつなげられるように管理人なりの考えをお伝えします。

歌う ※ 写真は記事の内容とは一切関係ありません

認知症とは

認知症は症候群をあらわす言葉で、その原因となる疾患は100種類ほどもあります。

● アルツハイマー型認知症:日本で一番多く、全体の6割ほどを締めます。
● 脳血管性認知症:脳梗塞や脳出血などの脳血管障害が原因で発症します。
● レビー小体型認知症:神経細胞の中に蓄積する特殊なタンパク質レビー小体が増えることが原因になります。
● 前頭側頭型認知症:脳の前頭葉や側頭葉が萎縮して血流が低下することで発症します。

アルツハイマー型認知症

認知症の中で最も多いアルツハイマー型認知症では、脳内へのアミロイドβタンパク質の蓄積と、神経原線維変化によって、脳が徐々に萎縮してしまいます。

アミロイドβは生命活動の老廃物で、これが神経細胞の情報伝達をするシナプスにまとわりついて死滅させます。

また神経原線維変化は、脳神経細胞内にある微小管をつないでいるタウたんぱくがリン酸化して絡み合う不要なゴミで、これが神経細胞の動きを悪くして死滅させます。

これらの原因から考えられる認知症予防のコアは、アミロイドβなどの老廃物の排出を速やかに行うことと、シナプスの能力を回復させることになります。

脳内の老廃物の排出

体内の老廃物除去を担うリンパ系は全身に存在しますが、脳内にはリンパが存在しないとされ、長らく脳の老廃物の排出経路は不明でした。
ところが近年になって、グリンパティックシステムという脳内の老廃物を排出する仕組みが提唱されて、注目されています。

グリンパティックシステムでは、脳脊髄液が動脈周囲のスペースから脳内に流入し、脳内の不要な物質を洗い流して、静脈周囲のスペースを通って脳外に排出されると考えられています。

ここで重要なことは、グリンパティックシステムは深いノンレム睡眠時に機能が高まるということです。
ノンレム睡眠は眠りについてから最初にあらわれて、副交感神経優位で心身をリラックスさせ、さらに脳のメンテナンスが行われます。
ここでしっかりと老廃物を排出するために、良質な睡眠が必須となります。

睡眠 ※ 写真は記事の内容とは一切関係ありません

良質な睡眠を得るために歌に出来ることは何か、最初に挙げられるのはストレスの発散です。
自分の好きな歌をのびのびと気分よく歌い上げる、これこそストレス発散の代表ではないでしょうか。
生活の中で溜まったストレスを発散するためにカラオケに行って大声で歌う、これは昭和から続く文化ですね。
ただし過度の飲酒や、ノドを傷めてしまうほどの大声は健康的とは言い難いのでご注意ください。

また首やあごや舌をストレッチして、大きな口をあけて歌うことは、脳への血流を良くする効果で老廃物の排出を促すことが期待できます。

さらに、腹式呼吸は副交感神経を優位にして心身をリラックスさせる効果があり、腹式呼吸を身に付ければ良質な睡眠のための手助けとなるでしょう。

ホルモンに注目してみると、幸せホルモンの一つであるセロトニンは、一定のリズムで体を動かすことや深い呼吸で分泌が増えると言われています。
これは歌の練習そのものですね。
このセロトニンが夜にはメラトニンという睡眠ホルモンに変身して、睡眠の質の向上を手助けしてくれます。

シナプスの可塑性

新しい経験や体験などによって脳が活性化されると、脳内ではシナプスのはたらきを強くしたり弱くしたりする“機能的な変化”と、シナプスの数を増やしたり減らしたりする“構造的な変化”が起きます。
このような人の経験や体験によって変化する柔軟性を『シナプスの可塑性』と呼び、神経細胞間の情報の伝わりやすさが操作されていると考えられています。
この機能により、死滅してしまったシナプスを補って情報の伝達を活発に行うことができると考えられています。

では、どうすればこのシナプスの可塑性を機能させられるのか、明確には分かりませんが『脳の活性化』がキーワードとなるようです。
まずは新しいことにチャレンジしてみること、音楽活動を含めてサークル活動などを始めてみるのがこれに該当しそうです。
それらの活動の中で、周りのメンバーとコミュニケーションを取ることも大切です。

歌の練習の中で実践できることは、人から言われたことをただ繰り返す反復練習ではなくて、自分の理想とする歌い方や、好きな歌手の歌い方に近付けるように工夫することなどでしょう。
歌詞の意味や曲全体の流れの中から、強弱や緩急などの歌い方を考えてみることもとても良いと思います。

また子供の頃や若い頃に聴いたり歌ったりした歌を練習すると、歌のメロディーと一緒に過去の出来事も思い出されて、回想効果につながります。

症状の緩和

音楽には認知症の周辺症状(BPSD)を緩和する効果も期待されています。
認知症にる脳の機能低下は、生活の質の低下や不安、焦りなどにつながります。
好きな音楽に触れる事でリラックスし、精神的な安定を得て不安が和らげられます。